国家規格としての安全基準へ
歩行者用自動ドアセットー安全性
2022年9月に改正されました
これまでも自動回転ドアの安全性に関してはJISが制定されておりましたが、広く使用されている引き戸タイプの自動ドアには、全国自動ドア協会(JADA)による安全ガイドラインしかありませんでした。
歩行者用の自動ドア全般を対象としたJIS A 4722が「国の安全規格」として制定されたことにより、メーカー・設計者から建物所有者まで各関係主体が取り組むべき内容が明確化されました。
日本の産業規格であるJISですが、グローバル化が進む社会の中では国際規格と整合させることが求められます。
JIS A 4722も、安全要求の厳しい欧州のEN規格をはじめとする世界各国の安全規格を参考に、日本特有の事情を反映させる形で制定されました。
これまでも、通行者の安全性向上のため、全国自動ドア協会が独自に作成した『自動ドア安全ガイドライン』の普及の取り組みにより、自動ドアの事故件数は減少傾向にありますが、超高齢社会を迎え、下記のような「思いがけない事故」も発生しており、従来以上の安全対策が求められております。
高齢者(70歳位)が、自動ドアの内側FIX(袖壁)に手をついて送迎用の車を待っていたところ、第三者が駐車場側から来たことでドアが開き、ドアに接触して転倒、大腿骨を骨折した。
2020年 東京オリンピック・パラリンピック大会を契機とし、開催地だけではなく全国的なユニバーサルデザインの街づくり、世界水準のバリアフリー化が推進されております。
自動ドアにおいても、日本に来訪される様々な方々が安全・安心で「快適」にご利用していただけるように、安全対策を実施していくことが必要です。
Adaptation range
日本で使用される自動ドアの大多数は引き戸ですが、
引き戸以外にも電気で駆動する以下の歩行者用自動ドアが対象となります。
引き戸
開き戸
回転ドア
折り戸
バランスドア
製品設計から保全点検にいたるまですべてのプロセスが対象となります。
自動ドアの供給者(製造者・販売者・施工者)は、JIS A 4722の要求事項を満たした駆動装置やセンサーなどを用いて、歩行者の行動特性や不注意などによって起こり得る状況を十分に理解した上で、歩行者の安全確保のための各種対策を行います。建物管理者(施主)は、日常点検ならびに専門業者による保全点検を実施し、JIS A 4722の要求事項を満たした性能・状態を維持することが求められています。関係する主体者がそれぞれのプロセスにおいて安全対策を講じていく必要があります。
Safety measures
安全対策 1
安全対策 2
安全対策 3
ドアが閉じる時の安全対策 | ||||
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開口部側での 挟まれ・衝突防止 |
センサー(保護装置)による対策(保護領域の確保) | 反射型光線センサー設置 | a・bの いずれかを 選択 |
|
補助光電センサー設置 | ||||
制御による対策(ドアの速度) | 低エネルギー作動 | |||
かけこみ等による ドア衝突防止 |
センサーによる対策(起動検出) | センサー起動検出範囲の確保 | ||
センサーによる対策(タッチスイッチ仕様) | 併用センサーの設置 |
共通の安全対策 | |||
---|---|---|---|
ドアセット材料 | 戸・枠の形状 | ドアや枠に鋭利な端部がない形状とする | |
ガラス | 割れたときに鋭利な破片とならないこと | ||
自動ドア装置 | 自動ドア装置・検出装置・保護装置 | JIS A 4722の要求を満たすこと | |
手動起動装置の取付高さ | 床面より950±50mmの高さに設置 | ||
表示 | 警告表示および案内表示 | 使用者の注意を促すための表示を行うこと | |
保全点検 | 完工検査、保全・点検の実施、記録 | 安全対策の記録および性能・状態の維持 |
2022年9月に改正されたJIS A 4722:2022では、「車椅子使用者用便房用自動ドアセット」及び「一般便房用自動ドアセット」の個別要求事項が新たに規定されました。
FAQ
JISには、ボルトや電池のように形や大きさを統一することで利便性や生産効率を向上させるもののほかに、標準化を図ることにより利用者の「安全性」を向上させるものもあります。JIS A 4722は、歩行者用の自動ドアの「安全」に関する「標準」を国で定めたものであり、このJIS A 4722で要求される安全対策が「あたり前」になっていくことにより、国内のどの建物の自動ドアでも、子どもからお年寄り、体の不自由な方まですべての方が安全で安心して利用できるようになることが期待されます。
JISは「規格」なので法規等で引用されていなければ強制力はありません。しかしながら、JIS A 4722は自動ドアの「安全の標準=最低限守るべきライン」を国家規格として定めたものであるため、ソフトロー(※)として、製造者・設計者・施工者から建物管理者までこれから広く採用されていくようになります。
JISに適合していない(=JISで定める安全要求を満たしていない)自動ドアで、万が一事故が発生した際には、建物所有者側の安全性配慮に過失があったものとして責任を問われる可能性があります。
※ソフト・ロー(soft law):権力による強制力は持たないが、違反すると経済的、道義的な不利を国家・自治体・企業・個人にもたらす規範。JIS規格・JAS規格、その他各種の基準など。【出典|デジタル大辞泉(小学館)】
「規格」自体には過去遡及すると言った考え方がありません。JIS A 4722は自動ドアの「安全」に関する規格のため、建物を訪れるすべての方が安全に安心して自動ドアをご利用いただけるように、既設の自動ドアにおいても、JIS A 4722で要求される安全対策に準拠させることをお勧めいたします。